ESA衛星データと気象庁の気温記録を組み合わせ、
秋の熊出没リスクを各県の豊凶調査より1〜2ヶ月早く予測するプロジェクト
R²=0.85は「熊被害の変動の85%をこのモデルで説明できる」ことを意味します。
r=0.90は「夏の気温と秋の熊被害にほぼ完全な相関がある」ことを示します。
いずれも1.0が最大値であり、0.85〜0.90は統計的に極めて高い精度です。
8月末の気温とSentinel-2 NDWIから算出。各県の豊凶調査(10月下旬公表)より先行する予測です。
※ 2026年のデータが揃い次第更新予定。以下はモデルのデモ値です。
このモデルは「夏が暑いほど、秋に熊が出やすい」ことを本州5県+北海道のデータで裏付けています。夏季平均気温との相関は全6エリアで r=+0.85〜+0.98。27℃を超える年は被害が50人を超える確率が高いです。
本モデルは本州のツキノワグマ(4県)で構築・検証した後、青森県と北海道に拡張を試みました。青森は白神山地を秋田と共有し、秋田と完全に同等の相関を示しました。北海道はヒグマ(体重最大400kg)と種が異なりますが、気温との相関が r=+0.979 と全エリア中最も高く、種を超えて「気温が熊を動かす」メカニズムが共通していることが示唆されました。
| 変数 | 意味 | 秋田 | 岩手 | 山形 | 新潟 | 青森 | 北海道 ヒグマ | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Summer_Temp | 夏季平均気温 | +0.898 | +0.846 | +0.916 | +0.914 | +0.898 | +0.979 | ★★★ 最強 |
| NDWI | 植物の含水量(衛星) | -0.629 | -0.605 | -0.394 | +0.046 | -0.340 | -0.626 | ★★ 補助 |
| NDVI | 植生の活力(衛星) | +0.282 | +0.436 | +0.444 | +0.626 | -0.100 | -0.591 | ★ 弱い |
夏季平均気温が最も確実な予測指標です(全6エリアで r=+0.85〜0.98)。気温データは気象庁が毎月公開するので、誰でも確認できます。
特筆すべきは北海道のヒグマでも r=+0.979 という極めて高い相関が出たことです。ツキノワグマとヒグマは種が異なりますが、「暑い夏 → 植物の水ストレス → 食料不足 → 人里に出る」という因果連鎖は共通しています。
ひと言でまとめると:「暑い夏 → 木の水ストレス → どんぐり不作 → 熊が里に下りる」。この因果連鎖が種を超えて、本州から北海道まで一貫して確認されています。
秋田県のNDVI+NDWI+気温 3変数モデル(R²=0.857)によるLeave-One-Out交差検証の結果
平均予測誤差は約8人。大量出没年(2023年の70人、2025年の66人)を「危険な年」として正しく判定できているのが重要なポイントです。正確な人数の予測よりも、「今年は特に危険かどうか」の判断に使えることがこのモデルの価値です。
カシノナガキクイムシが媒介する「ナラ枯れ」により、ミズナラ・コナラ(どんぐりの木)が全国で枯死しています。2010年にピーク(32万m³)を記録し、現在も年間12万m³規模の被害が続いています。
熊被害が増えている理由は「暑い夏」だけではありません。どんぐりを実らせる木そのものが、ナラ枯れで年々減少しているのです。
35年間の衛星データ(Landsat)で白神山地のブナ林を追跡すると、植物の含水量(NDWI)が10年あたり0.056ずつ低下しています。これは森林が長期的に乾燥ストレスを受けていることを意味します。
ひと言でまとめると:「ナラ枯れでどんぐりの木が減る」×「猛暑でどんぐりが実らない」= 二重の食料不足 → 熊が街に出る。
SRTM標高データ(30m解像度)と衛星画像を重ね、白神山地〜秋田平野の各標高帯の植生状態を分析。「どの高さの森が最も熊被害と関連するか」を定量的に特定しました。
| 標高帯 | エリアの性質 | NDWI vs 熊被害 (r) | 凶作年との差 |
|---|---|---|---|
| 里山(100-300m) | 人と熊の遭遇ゾーン | -0.718 ★★★ | -0.011 |
| 山麓(300-500m) | ナラ・コナラ林帯 | -0.626 ★★★ | -0.019 |
| 中腹(500-800m) | ブナ林帯(下部) | -0.579 ★★ | -0.022 |
| 山地(800-1200m) | ブナ林帯(上部) | -0.544 ★★ | -0.021 |
| 平野(0-100m) | 人里・農地 | -0.246 ★ | -0.004 |
標高帯別の分析で、3つの重要な事実が判明しました。
① 里山(100-300m)のNDWIが熊被害と最も強く相関する(r=-0.72)。
里山は人里と山林の境界にある「緩衝地帯」です。ここの植生が乾燥ストレスを受けると、熊は里山を素通りして人里に出てきます。里山が「最後の防波堤」の役割を果たしているのです。
② 高標高(500m以上)のNDWIが年々低下している。
中腹〜山地のブナ林帯で、年間-0.005のペースでNDWIが下がっています。これは高標高の森林が気候変動で乾燥化し、熊の食料が構造的に減っていることを意味します。
③ 凶作年は高標高ほどダメージが大きい(差-0.02以上)。
猛暑の影響は高標高ほど深刻で、山地のブナ林のNDWIが大きく低下 → 食料不足 → 熊が標高を下げて移動 → 里山を通過 → 人里に出る。
ひと言でまとめると:「山が乾く → 里山が持ちこたえられなくなる → 熊が街に出る」。この連鎖を衛星データで標高帯ごとに追跡できます。
| 月 | 凶作年 | 豊作年 | 差 |
|---|---|---|---|
| 6月 | 0.359 | 0.386 | -0.027 ★ |
| 7月 | 0.359 | 0.375 | -0.016 ★ |
| 8月 | 0.332 | 0.349 | -0.017 ★ |
6月〜7月のNDWIが前年より低下していたら、秋に熊が多く出る可能性が高い。差は0.01〜0.03と小さいですが、数百万ピクセルの平均値での差なので統計的に意味があります。豊凶調査の結果(10月下旬)を待たずに、7月の衛星データで先行的な判断が可能です。
ESA Sentinel-2(無料)からブナ林帯のNDVI・NDWIを取得。雲をピクセル単位で除去し、森林のみを抽出。
気象庁アメダスの月別平均気温と衛星指標を統合。夏季平均気温が最も強い説明変数。
9年分のデータで重回帰モデルを構築。Leave-One-Out交差検証で過学習を防止。4県すべてでR²>0.8を達成。
8月末の気温+NDWIから9月に予測を公開。各県の豊凶調査(10月下旬)より1〜2ヶ月先行。